通常、血管は加齢とともに傷んでいきます。年間11万人以上が亡くなる心筋梗塞や脳梗塞も傷んだ血管にコレステロールなどが詰まり血液の通り道がふさがれてしまう血管の病です。
実は、100歳を超えて生きている人は、「あるホルモン」の効果で、血管を若い状態に保つことができているいいます。
では、そのホルモンとはどのようなものなのでしょうか?
目次
100歳を超えて生きている人の血管
健康な人の血管壁の厚さは1.1mm未満と言われていますが、動脈硬化などが起こると、1.2mm以上になってしまいます。
100歳の人の血管を調べてみると、1.1mm未満の場合が多いという事実があります。また、善玉ホルモンの分泌量も多いことが分かってきました。
善玉ホルモンの正体とはいったい何?
血管の善玉ホルモンは、アディポネクチンと呼ばれるホルモンで、100歳を超える人の中では、平均の約2倍もアディポネクチンの値が高いということが分かってます。
アディポネクチンとは、1996年に日本人の研究者によって発見されたホルモンで、①血管の傷を修復するほか、②血糖値や血圧を下げたりしてくれるうれしい働きもあります。
血管を若く保ち健康長寿のカギとなるアディポネクチン。では、なぜ100歳を超える人はアディポネクチンを多く分泌できているのでしょうか?
善玉ホルモンを多く分泌するには?
100歳を超える人の特徴を見ていきましょう。
1つのポイントは、体型維持をしている人が多いということがあります。適正な体型で、太り過ぎず、やせ過ぎず、体型維持をしていくことが、善玉ホルモン(アディポネクチン)の分泌をよくすることに関係があるそうです。
では、なぜ体型を維持することで、血管を若く保つアディポネクチンの分泌とが関係しているのでしょうか。
実は、アディポネクチンが作られているのは、内臓脂肪をはじめとする脂肪なのです。人は、お腹の周りに脂肪細胞を持ち、エネルギーを蓄えています。この脂肪細胞から血管を若く保つアディポネクチンが分泌されるのです。
でも、肥満体型になると脂肪細胞も膨らみ、するとアディポネクチンの分泌量が減少してしまうのです。
このように、100歳を超える人は、体型を維持することで、年をとってからもアディポネクチンを多く分泌していたのです。
太った脂肪が出す恐るべき物質とは?
肥大してしまった脂肪細胞では、アディポネクチンの分泌が減るばかりでなく、血管を傷つけてしまう、悪玉物質がたくさんできてしまうのです。脂肪細胞が太ると、善玉だったはずのアディポネクチンが、血管を傷つけてしまう悪玉ホルモンにとって変わってしまいます。
適度な大きさの脂肪細胞は、善玉ホルモンであるアディポネクチンを分泌し、毛細血管を通って、全身の細胞までホルモンを届けます。
ところが、過食などにより、血液中の中性脂肪が増えると、脂肪細胞にため込まれるようになり、脂肪細胞が炎症を起こした状態となり腫れあがってしまいます。こうなると、それまで分泌されていたアディポネクチンに変わって、炎症性サイトカインという炎症を引き起こす悪玉ホルモンにが多く分泌されるようになってしまいます。
悪玉ホルモンが分泌されると、インスリンが効きにくくなり、糖尿病を引き起こしやすくなったり、血管に炎症を起こして動脈硬化を引き起こしてしまったりします。
悪玉ホルモンを増やす驚きの食材とは
腹囲何センチくらいから悪玉ホルモンが増えてくるのでしょうか。
男性の場合は、腹囲85cm以上の人が要注意です。一方で女性は、アディポネクチンには影響しない皮下脂肪が男性に比べて多いので、女性の方が5cmくらい男性よりも基準が大きくなるので、腹囲90cm以上の人が要注意です。
アディポネクチンの分泌を増加させる食品は?
現在、個々の食品がアディポネクチンの分泌量を増加させるメカニズムも研究されています。
魚を中心とした食事で、特に青魚をたくさん食べるとアディポネクチンが良いとされています。魚の油に含まれるEPAやDHAがアディポネクチンを増やすと考えられています。
ほかにも、赤ワインはアディポネクチンの分泌量を増加させるとされています。赤ワインを1日1杯半飲むと、アディポネクチンの分泌量が3割増えたという論文もあります。