アスピリンは、解熱鎮痛剤として、また、抗血栓薬としてもよく医療機関などで使用される薬です。アスピリンの作用機序や効果と、8つの副作用と、6つの重い副作用についてまとめてみました。アスピリンってどういうお薬なのか、副作用は他にはなにがあるのか、不安を少しでも少なくしていただけたらと思います。
アスピリンの副作用
アスピリンは、解熱鎮痛剤として、また、抗血栓薬としてもよく医療機関などで使用される薬です。このアスピリンが処方されますと、たいていの薬局では、副作用として「胃腸障害」などを説明されるため、アスピリンってどういうお薬なのか、副作用は他にはなにがあるのか、不安があると人も多いと思います。
そこで、今回はアスピリンの副作用について解説していきたいとおもいます。まずは、アスピリンとは一体どのようなお薬なのでしょうか?
アスピリンとは
アセチルサリチル酸
アスピリンは、ドイツのバイエル社が、アセチルサリチル酸という成分にたいして、商標登録していました。その後、第一次世界大戦でドイツが敗戦したために、連合国により商標は取り上げられ、一般的に使用されるようになりました。
そのため、現在では、日本薬局方でも、アスピリンが正式名称となっています。解熱鎮痛剤としてだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞の予防のための血栓防止する目的として抗血小板薬としても、使用されています。
アスピリンの効果には性差があるといわれており、男性では心筋梗塞リスクを低下させ、女性では脳卒中リスクを減少させる効果があるとされています。
非ステロイド性抗炎症剤としての作用機序
痛いと感じるには、体内に「痛み物質」が生じるためにおこります。痛み物質を作り出さないようにすれば、人は痛みを感じないですむことができます。痛みを感じさせないためには、痛み物質である「プロスタグランジン(PG)」が体内で働かせないようにすればいいのです。
プロスタグランジンは体温を上昇させたり、痛みを増幅させたりする作用をもっているため、多くの解熱鎮痛剤は、このプロスタグランジンの働きを阻害し、痛みや発熱を抑えられるよう作られています。
プロスタグランジンはシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素によって作られているため、この酵素の働きを阻害することで、プロスタグランジンは生成されなくなり、痛みや発熱を引き起こす物質が作られなくなるため、解熱鎮痛作用を得ることができるといわれています。
特にシクロオキシゲナーゼに作用し、プロスタグランジンの合成を抑える薬のことをNSAIDs(エヌセイド)と読んでおり非ステロイド性抗炎症剤のことです。このNSAIDsの一種として、アスピリンも存在しております。
アスピリンの効果
抗炎症作用、解熱
前述した炎症や発熱をおこすプロスタグランジンの合成酵素「シクロオキシゲナーゼ(COX)」の生合成を抑制し、炎症をしずめて、腫れや発赤、痛みなどの症状を抑える役割を持っています。また、解熱させる作用も持っており、解熱鎮痛薬ともいわれています。
しかし、アスピリンには、熱がでたら下げる、痛みがでたら抑えるといったその症状に合わせて対処する対処療法として使用され、病原菌を殺すなど、熱や痛みの原因そのものを治す作用はありません。
血液を固まりにくくする
アスピリンは少量で使われると「抗血小板薬」としての効果が期待できるそうです。抗血小板薬とは、血小板の作用を抑制し、血液が固まってしまうのを防ぐ作用をもつ薬のことです。おもに、血液が固まることで起こる狭心症や心筋梗塞、脳卒中などの疾患に用いるほか、川崎病にともなう心血管障害にも適応しているそうです。
脳卒中でいうと、脳の太い動脈がコレステロールなどで狭くなって脳梗塞を起こす「アテローム血栓性梗塞」や、頚動脈の硬化による「一過性脳虚血発作」にアスピリンの予防効果が高いとされています。反対に、無症状の人や脳卒中を起こしたことのないリスクが低い人に対する予防効果はあまり高くないそうです。そのため、脳卒中予防でアスピリンを飲んでも、効果はあまりないとのことです。
そのほか、流産の予防薬として応用されることもあるそうです。まだ充分な効果は証明されていないそうですが、胎盤に血栓ができるのを予防し、胎盤循環をよくする作用が期待されているそうです。抗リン脂質抗体が陽性であると、有効と考えられているようです。
アスピリンの副作用
胃腸症状、食欲不振
やはり、アスピリンでもっとも多い副作用は胃腸症状だそうです。
胃腸症状といえば、
・胃腸障害がおこる
・嘔吐を起こす
・吐き気を催す
・お腹が痛くなる
・胸やけが起こる
・便秘・下痢になる
・食道炎をおこす
・食欲がなくなる
・胃部に不快感を感じる
といった症状だといわれています。
消化管出血
胃痛や腹痛がおこり、消化管が出血したことにより、便に血液がついたり、黒いタール状の便がでたりすることがあるそうです。これを下血といいます。下血には約100〜200mLの上部消化管出血が必要だといわれています。
また、吐血といってコーヒー色のものを吐くこともあるそうです。黒い色になるのは、赤色のヘモグロビンが胃酸によって褐色のヘマチンに変色したためだとのことです。
喘息発作
アスピリンに過敏な方ですと、ぜんそく型(気道型)とじんましん型(皮膚型)の副作用が出ることがあります。ぜんそく型ですと、いわゆるアスピリン喘息(NSAIDs過敏喘息ともいいます)が生じ、気管支喘息が基礎疾患としてある方が、アスピリンなどNSAIDsを服用し、非常に強いぜんそく発作(気管支炎になるなど)と鼻症状(鼻炎になるなど)が誘発されるといわれています。
ちなみにアスピリン喘息とはアスピリンだけでなく解熱鎮痛薬が全体的に過敏な体質をもつ喘息のことをいいます。そのため、他の解熱鎮痛薬にも注意が必要とのことです。
発疹、じんましん
じんましん型はもともとじんましんが出やすい、症状として現れていた方が、アスピリンを服用し、さらに、じんましんやまぶたや唇が腫れる血管浮腫が誘発されてしまうのが特徴だといわれています。ただし、上記のぜんそく型とじんましん型が同時に起こることはまれだそうです。
アスピリン等の解熱鎮痛薬を服用後、数分から半日で、地図状に皮膚が盛り上がり、かゆみをともなう蕁麻疹や唇やまぶたの腫れなどの副作用があった場合は、アスピリンで副作用が出た可能性が高いとのことです。
腎臓や肝臓の働きの低下
アスピリン服用で、肝機能障害によりAST(GOT)値上昇,ALT(GPT)、γ-GTP等が著しく上昇したり黄疸を生じることがあり、腎障害は、身体の外に余分な塩分などが排出されないためにむくみなどの症状が出ることがあるとのことなので、異常があると感じる場合は、かかりつけの医師に相談するようにしましょう。
血液異常
貧血になる、血小板機能が低下し出血しやすくなるなどの症状が現れることがあるそうです。なんとなくだるい、血が止まりにくいなどの症状があるときは、医師に相談してみるとよいでしょう。
低血糖、血圧低下
低血糖の症状は、お腹がすきすぎたときの状態です。手が震えたり、冷や汗がでる、動悸がするなどの症状があわられるとのことです。血圧低下の症状としては、疲れやすい、立ちくらみがするなどの症状だそうです。
頭痛、倦怠感、めまい
他にも、気分が悪くなり嘔吐したり、口が渇いたり、頭が痛くなったり、めまいをおこしたり、耳鳴りや難聴になったり、体がだるかったりといった症状もでることがあるそうです。これらの症状がでたら早めに医師に相談するようにしましょう。
アスピリンの重い副作用
ショック、アナフィラキシー
アスピリンで重い副作用はめったにないとのことですが、初期症状として、知っておくと安心です。ショックの症状としては、血圧低下が進み失神する、意識がなくなる、唇が紫色になりチアノーゼをおこすなどです。
アナフィラキシーの症状としては、呼吸が困難になる、全身潮紅する、血管浮腫(皮膚が虫に刺されたように盛り上がる)、じんましんができるなどです。
他にもショックやアナフィラキシーの前兆として、アスピリンを服用後、
・気持ちが悪くなった
・冷や汗をかき始めた
・顔面が蒼白になった
・手足が急に冷えてきた
・しびれを感じた
・顔や喉の腫れてきてゼーゼー息苦しい感じがみられてきた
・目の前が暗くなり意識が薄れてくるなどの訴えがあった
などの症状がみられた場合は、救急車に連絡し、早めの対処を心がけましょう。
重い出血
重い出血とは、消化管からの出血(吐血・赤~黒いタール状の便がでる下血など)、肺からの出血(血痰)、脳からの出血、眼底からの出血などがあげられます。
脳からの出血など頭蓋内出血の初期症状として、頭痛、息苦しい、悪心・嘔吐、意識障害、片側の麻痺、うまく話せない、意識が薄れる等などが出現することがあります。このような場合は、すぐに医療機関に相談するようにしましょう。
重い皮膚・粘膜障害
皮膚粘膜眼症候群や中毒性表皮壊死症が出現することがあるそうです。皮膚粘膜眼症候群とは、紅皮症といわれ皮膚がまだら模様に赤くなったり、皮膚に水ぶくれができたり、発熱したり、関節の痛みがでたり、目が充血するといった症状がでるとのことです。
中毒性表皮壊死症とは、皮膚が赤くなったり、皮膚が焼けるように痛んだり、皮膚に水ぶくれができたり、口内が荒れるといった症状がでるとのことです。このような症状が出た場合は、かかりつけ医にすぐに相談するようにしましょう。
重い血液成分の異常
再生不良性貧血、血小板減少、白血球減少が現れることがあるそうです。特にアスピリンを長期に服用される方は、定期的に血液検査を行い、数値を確認しておくことが大切となるとのことです。
肝臓の重い症状
いつもより倦怠感が増大する、食欲が低下する、呼吸がくるしくなる、常に眠い状態、気分が悪い状態が続く、黄疸がでる、血液検査でAST(GOT)値、ALT(GPT)値、γ-GTP値、総ビリルビン値等が上昇する等がみられた場合は、肝機能が低下している可能性があります。医師に相談してみるとよいでしょう。
消化管潰瘍・胃腸出血
下血のある胃潰瘍・十二指腸潰瘍等の消化性潰瘍が出現することがあるそうです。また、消化管出血、腸管穿孔を伴う小腸・大腸潰瘍が出来ることもあるので、注意が必要といわれています。
小腸潰瘍とは、食後の腹痛が1~3時間ある、腹部が張った感じがする、吐き気がある、嘔吐する、下痢をする等の症状が現れるとのことです。
大腸潰瘍とは、血便がでる、頻繁に下痢になる、水便がでる、下腹部が痛い、発熱する、体重が減る等の症状が現れるとのことです。
消化性潰瘍とは、胃がもたれる、吐き気がする、痛みがある、空腹時にミゾオチ部分が痛む、黒い便がでる等の症状が現れるとのことです。
副作用を抑える薬
胃酸分泌抑制薬
胃粘膜障害を予防するために、胃酸を抑制する胃酸分泌抑制薬(PPI)をアスピリンと併用することで、消化管出血のリスクが低下するといわれています。
胃酸分泌抑制作用でよく知られているものにヒスタミンH2受容体拮抗薬であるH2ブロッカーがありますが、胃酸分泌抑制薬は、H2ブロッカーと比べ、より強力な胃酸分泌抑制作用をもち、効き目も長持ちするそうです。
胃酸分泌抑制薬は、食事と一緒もしくは、可能であるなら食前に服用すると、酸分泌抑制効果が増強するといわれているため、出来る限り空腹を避け、食事とともに服用するとよいそうです。少し工夫することで、アスピリンと胃酸分泌抑制薬以外の薬を増やす必要がなくなるため、むやみに薬剤を増量しないよう気を付けるとよいでしょう。
胃粘膜保護剤、制酸剤
胃粘膜保護剤とは、アスピリン等によって荒れた胃粘膜を保護したり修復を補助する薬だそうです。胃の粘膜に直接作用するので、こちらも胃酸分泌抑制薬と同様、食前や食間、また就寝前に飲むことがあるそうです。
薬によっては便秘がちになる可能性もあるそうです。その場合は、医師に相談してみるとよいでしょう。
まとめ
これまで数多くの消化管出血の患者さんとお会いしてきました。長期にアスピリン等の解熱鎮痛薬・抗血栓薬を服用しており、消化管から出血し下血しているにもかかわらずなかなか症状に気付かないまま、運ばれてきたときにはかなり消化管出血がひどかったという方も少なくありません。
思えば、吐血ならまだしも、下血は、そこまで自分の便を観察して黒いなぁと思うことは少なく、アスピリンの副作用を知っていたとしても、なかなか気付きにくい症状なのかもしれません。
もしアスピリン等を長期に服用しているのであれば、しっかり便の状態やいつもと違う症状などを観察し、身体からのSOSを見逃さないようにしたいものです。