目次
事件の概要
本件は、共有者らが所有する土地について、平成8年度(第3年度)の固定資産税課税標準の基礎となる価格決定(8046万2940円)が土地課税台帳に登録されたことに対し、
固定資産評価審査委員会へ審査申出をしたものの棄却されたため、その棄却決定の取消しを求めた事案です。
事案の背景として、土地は基準年度当時は1筆の宅地でしたが、その後いったん3筆に分筆され、更地化されたのち、再び合筆されて本件土地となっていました。
争点は、①審査委員会の審査手続が中立・公正を欠く違法なものか、②合筆後の第3年度価格をどのように評価すべきか、にありました。
争点
- 固定資産評価審査委員会の審査手続に、処分取消しを要する手続的瑕疵があるか
- 地方税法349条3項ただし書の適用場面で、合筆後土地の価格を「合筆前価格の合計」でみるべきか、「類似土地の基準年度価格比準」でみるべきか
関係法令
- 地方税法423条、425条1項(当時):固定資産評価審査委員会の審査手続
- 地方税法349条2項1号・3項ただし書:第2年度・第3年度における特別の事情がある場合の評価替え
- 地方税法349条3項本文括弧書:第2年度評価替えとの関係
裁判所の判断ポイント
1. 手続違法の判断基準を明確化
最高裁は、固定資産評価審査委員会制度の趣旨を「市町村長から独立した第三者機関による中立的審査を通じ、評価の客観的合理性を担保し、納税者の権利保護と適正課税を図ること」と整理しました。
そのうえで、明文違反がなくても中立・公正を損なう場合は手続的瑕疵となり得るが、直ちに取消事由となるかは、手続規定の趣旨・目的、瑕疵の程度・内容を個別具体的に判断すべきとしました。
2. 「不適切」と「取消し必至の違法」を区別
委員会審議の場に原処分庁補助職員が同席していた点や、書記に税務担当部署職員が充てられていた点は、中立・公正の観点から「不適切」としつつも、
本件では当該職員らが審議内容に実質的影響を与えた事実が認められないこと、書記関与が書記事務にとどまることなどから、
「処分の内容のいかんを問わず取り消さなければならないほどの瑕疵」には当たらないと判断しました。
3. 合筆は第3年度評価替えの「特別の事情」に当たると判示
最高裁は、分筆時に各筆が長方形で独立利用が予定されていた土地を再度合筆し一体化したことについて、
単なる形式変更ではなく、区画(形状)の変更および利用状況の変動を伴うものとして、地方税法349条2項1号の「特別の事情」に該当すると判断しました。
したがって第3年度は349条3項ただし書により、第2年度価格の機械的据置きではなく、類似土地の基準年度価格比準による評価決定が相当とされました。
4. 比準対象として旧同一宅地を採った価格決定を是認
原処分庁は、本件土地に類似する土地として「旧本件土地」(分筆前の同一宅地)を選定し、その基準年度価格8046万2940円に比準して本件価格を決定しました。
最高裁は、本件土地と旧本件土地が実質的に同一宅地であることを重視し、この価格決定を相当と評価。
原審の「合筆前3筆の第2年度価格合計(7477万1852円)に一致すべき」とする解釈を退けました。
5. 結論
最高裁は、原判決(納税者側勝訴)を破棄し、被上告人の控訴を棄却しました。
すなわち、審査手続にも価格決定にも取消しを要する違法はないとして、審査委員会の棄却決定を維持しています。
判例データ
| 裁判所 | 最高裁判所 |
|---|---|
| 事件番号 | 平成10年(行ヒ)第104号 |
| 事件類型 | 固定資産評価審査委員会の棄却決定取消請求 |
| 主文 | 原判決破棄/被上告人の控訴棄却/控訴費用・上告費用は被上告人負担 |
| 主要条文 | 地方税法349条2項1号・3項ただし書、423条、425条1項(いずれも当時法) |
| キーワード | 固定資産評価審査委員会、中立公正、手続的瑕疵、分筆・合筆、評価替え、基準年度価格比準 |
注意書き
本記事は判決内容の整理を目的とする一般的情報です。実務での適用は、対象土地の分合筆経緯、利用実態、評価資料、当時法令の文言・改正状況により結論が異なり得ます。
実際の案件では、判決原文・関係通達・最新実務資料を必ず確認してください。