目次
事件の概要
本件は、20筆の土地の所有者である原告が、平成15年度ないし平成29年度の固定資産税・都市計画税について、
用途地区の区分を誤られた結果、過大な税額を賦課・徴収されたとして、
国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を請求した事案です。
判決は、原告の請求を認め、被告に対し1億9333万3896円および各納付日からの遅延損害金の支払を命じました。
争点は、①用途地区区分に関する賦課処分の違法性、②国家賠償法上の違法(注意義務違反)の有無、
③消滅時効の起算点、に整理されています。
争点
- 本件各賦課処分(用途地区区分)が違法か
- 過大課税が国家賠償法1条1項の「違法」と評価できるか(注意義務違反の有無)
- 国家賠償請求権の消滅時効の起算点(国家賠償法4条・旧民法724条)をいつとみるか
関係法令(判決での位置づけ)
- 地方税法388条1項:総務大臣が固定資産評価基準(評価の基準・方法・手続)を定め告示する旨
- 地方税法403条1項:市町村長は、地方税法388条1項の固定資産評価基準によって固定資産価格を決定すべき旨
- 国家賠償法1条1項:公権力行使に当たる公務員の違法行為により他人に損害を与えた場合の賠償責任
- 国家賠償法4条・旧民法724条:不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効(損害及び加害者を知った時から3年)
裁判所の判断ポイント
1. 用途地区の認定(大工場地区か中小工場地区か)
裁判所は、対象土地を含むA地区について、都市計画法上の工業専用地域であり、
敷地規模9000㎡超の工場が3区画以上集中している事実を認定し、
評価基準・通達・評価要領に照らして「大工場地区」に区分されると判断しました。
そのうえで、被告市長がA地区を中小工場地区として賦課したことにより、
原告が本来支払うべき額を超える固定資産税等を賦課・徴収したと認定しています。
2. 国家賠償法1条1項の違法性判断(注意義務違反の枠組み)
裁判所は、固定資産価格や税額が結果として過大であっても、
それだけで直ちに国家賠償法1条1項の違法になるわけではないと整理しました。
一方で、価格決定・賦課決定に関与した公務員が、
「職務上通常尽くすべき注意義務」を尽くさず漫然と決定したといえる事情があれば、
同項の違法が認められるという判断枠組みを示しています。
本件では、用途地区区分の前提となる要件充足が明確であるにもかかわらず、
中小工場地区区分を継続した点が重視され、国家賠償法上の違法が肯定されました。
3. 損害額の考え方
判決は、過納分相当額に加え、弁護士費用相当額を含めた損害を認定し、
合計1億9333万3896円の支払を命じています。
他方で、被告が主張した「中小工場地区としての概算税額」ベースの試算は、
本件の損害算定における直接的な基礎としては採用していません。
4. 消滅時効の起算点(国家賠償法4条・旧民法724条)
裁判所は、国家賠償請求権の時効起算点について、
「被害者が損害及び加害者を知った時」とは、
賠償請求が事実上可能な状況で、その可能な程度に認識した時を意味し、
特に「損害を知った時」は損害の発生を現実に認識した時をいう、と判示しました。
この枠組みに基づき、具体的事情(当事者間の主張経過、審査手続の進行等)を踏まえて時効成否が検討されています。
判例データ
| 裁判所 | 神戸地方裁判所 |
|---|---|
| 事件番号 | 令和4年(ワ)第647号 |
| 主文 | 被告は原告に対し1億9333万3896円及び各起算日から年5分の割合による金員を支払う。訴訟費用は被告負担。 |
| 主要条文 | 地方税法388条1項、地方税法403条1項、国家賠償法1条1項、国家賠償法4条、旧民法724条 |
| 主な論点 | 用途地区区分(大工場地区/中小工場地区)、国家賠償法上の違法性、消滅時効起算点 |
注意書き
本記事は判決内容の整理・解説を目的とする一般的な情報です。
同種事案でも、土地の位置・利用状況・評価資料・手続経過などの事実関係によって結論は異なり得ます。
実際の検討にあたっては、判決原文、関係法令、最新の実務資料をご確認ください。