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公文書の電磁的記録は「紙出力のみ」で足りるか|岡山地裁令和7年(行ウ)第10号(公文書開示請求却下処分取消)

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事件の概要

本件は、原告が地番図電子データ(シェープファイル)の開示を請求したところ、処分行政庁が「紙に出力する方法」による開示しか認めていないことを理由に当該請求を却下したため、その却下処分の取消しを求めた事案です。

被告側は、紙出力を開示方法とする規則には、個人情報・機密情報の管理や技術的・人的コストの観点から合理性があると主張しました。これに対し裁判所は、公文書たる電磁的記録の開示制度の趣旨に照らし、「紙出力のみ」を開示方法として定めることの適法性を中心に判断しています。

判決は、処分行政庁が紙出力以外の開示方法を定めていない点に違法があるとして、本件却下処分を取り消しました。

争点

  • 公文書が電磁的記録である場合、開示方法を「紙への出力」のみに限定できるか
  • 紙に出力した開示で、電磁的記録に含まれる情報(例:座標値等)を実質的に開示したといえるか
  • 条例が規則(処分行政庁)に委任した開示方法の定めが、委任の趣旨に適合しているか

裁判所の判断ポイント

1. 条例の委任趣旨と開示方法の限界

裁判所は、条例が公文書たる電磁的記録を開示対象としたうえで、具体的な開示方法を規則に委任している以上、規則の定めは「電磁的記録の開示」を実質的に実現する内容でなければならないと整理しました。

そのため、開示方法を紙出力のみに固定し、結果として電磁的記録の一部情報を開示できない仕組みは、条例の委任趣旨に反する違法があると判断しています。

2. シェープファイル特有の情報欠落

本件では、地番図電子データ(シェープファイル)を紙に出力すると、データ上の座標値情報が数値として表示されないことが認定されました。裁判所は、この点を重視し、紙出力のみでは請求対象である電磁的記録の内容を十分に開示したことにならないと判断しました。

3. 被告の合理性主張(個人情報保護・コスト)との関係

被告は、非公開情報の確実なマスキングや技術的・人的コストを理由に紙出力限定の合理性を主張しました。しかし裁判所は、そうした事情があるとしても、電磁的記録の開示制度の趣旨を失わせるほどの一律限定は許されないとし、最終的に本件却下処分は違法であると結論づけました。

判例データ

裁判所 岡山地方裁判所
事件番号 令和7年(行ウ)第10号
事件名 公文書開示請求却下処分取消請求事件
言渡日 令和7年12月17日
口頭弁論終結日 令和7年10月14日
主文 処分行政庁が原告に対してした公文書開示請求却下処分を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。
主要論点 電磁的記録の開示方法、紙出力限定の適法性、委任立法(条例と規則)の適合性

判決全文

令和7年(行ウ)第10号 公文書開示請求却下処分取消請求事件
主文
1 処分行政庁が原告に対し令和7年3月10日付け岡税管第614号をもってした公文書開示請求却下処分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。事実及び理由
第1 請求
主文同旨

第2 事案の概要等
1 事案の概要
(中略)

(被告主張要旨)
履歴やログ等が存在するが、これらの情報には被告内部での検討段階での機密情報や個人情報、あるいは、公務員でない者によって作成編集された個人情報や法人情報などが含まれている可能性が高く、それらの情報を適切かつ確実に非開示とする処理を行う上で、技術的な問題や人的物的コストの問題が伴うことから定められているものである。したがって、上記規定は十分な合理性を有するものである。
他方で、原告は、本件処分によって地番図シェープファイルをデータとして取得することができなかったに過ぎず、紙媒体に出力した形でその情報を取得することは可能であったのだから、原告の公文書開示請求権については、実質的に見てその権利が損なわれているものでもない。
以上のとおり、本件規則第6条第2項は、十分な合理性を有するものであり、かかる本件規則の定めに裁量権の逸脱・濫用は認められないことから、これに基づいてされた本件処分も適法であることは明らかである。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所の判断の要旨
当裁判所は、公文書である電磁的記録の開示につき、本件条例によって規則により開示方法を定めることを委任された処分行政庁において、本件規則上、その開示方法を「紙に出力し、若しくは採録したものを閲覧に供し、又は視聴することにより行う」ことを定めるにとどまり、紙への出力以外に電磁的記録を開示する方法を定めていない点で、本件条例の委任の趣旨に反する違法があり、したがって、本件処分は取り消されるべきと判断する。以下、その理由を判示する。

2 理由
(1) 本件条例は、第2条第2号において、開示対象となる公文書として電磁的記録を掲げ、第8条第1項により何人も公文書の開示を請求することができる旨を定めた上、その開示の方法につき、第13条第1項において「フィルム、テープ及び電磁的記録についてはその種別、技術の進展状況等を勘案して規則で定める方法により行う」ものとして、規則(処分行政庁)に委任している。
即ち、本件条例は、実施機関の職員が職務上作成した公文書たる電磁的記録があるときは、当該電磁的記録の開示を請求できるものとし、その開示の具体的な方法を処分行政庁に委任しているのであって、公文書たる電磁的記録の開示請求がされた場合、開示対象となるのはあくまで当該請求にかかる電磁的記録である。
そして、本件規則第6条第2項が定める紙に出力する方法は、電磁的記録を開示する方法の一つではあるものの、電磁的記録は、人の知覚によっては認識することができない方式で作成されたものであるため、これを紙に出力した場合、直ちに当該電磁的記録の情報が余すことなく出力されるわけではなく、本件請求の対象である地番図電子データ(シェープファイルデータ)についても、紙に出力された地番図ではシェープファイルデータ上に付与されている座標値情報が数値として表示されなくなることが認められ(乙2)、開示方法を紙への出力のみとした場合、紙に出力されない情報も公文書たる電磁的記録の一部であるにもかかわらず、当該情報が開示されないことになる。
しかるところ、本件条例は、公文書たる電磁的記録を開示するものとした上、その具体的方法の定めを規則(処分行政庁)に委任したに過ぎず、公文書たる電磁的記録を開示する方法を定めないこと、あるいは、その一部であっても開示できない方法のみを定めることは、原則として本件条例の委任の趣旨に反するというべきである。
ただし、本件条例第13条第1項は、開示方法を「その種別、技術の進展状況等を勘案して規則で定める」ことを委任するものであるため、技術上の理由等により実施困難な開示方法を定めることまでを求めるものとは解されない。したがって、紙への出力以外の方法により公文書たる電磁的記録を開示することが、技術上の理由等により実施困難である場合には別論であるとしても、紙への出力のみを開示方法として定めてそれ以外の開示方法を定めず、紙に出力されない電磁的記録が開示されない事態を招くことが、本件条例の委任の趣旨に反しないということはできない。

(3) 以上によれば、処分行政庁が、公文書たる電磁的記録の開示方法として、紙への出力のみを定め、複製等その他の開示方法を定めていないことは、紙に出力されない電磁的記録を開示する方法を定めていないものとして、本件条例の委任の趣旨に反するものということができる。

3 結論
前記2判示のとおり、処分行政庁が公文書たる電磁的記録の開示方法として、紙に出力する以外の方法を定めていないことは、本件条例の委任の趣旨に反する違法があると認められ、したがって、地番図電子データのシェープファイルによる開示を求める本件請求につき、紙に出力する方法による開示請求ではないことを理由にこれを却下した本件処分も違法であることを免れない。よって、本件処分を取り消すこととして、主文のとおり判決する。

岡山地方裁判所第2民事部

注意書き

本記事は判決内容の整理・解説を目的とする一般的な情報です。同種事案でも、対象データの性質、条例・規則の文言、非公開情報の範囲、技術的対応可能性などにより結論は異なり得ます。実際の運用・対応にあたっては、判決原文および最新の関係法令・例規をご確認ください。

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